甲南大学 柳川雅樹監督(写真提供=甲南大学サッカー部)

ーー実際3年間指導をされてきて手応えはどうですか?

 手応えはないですね(笑)。手応えがないというか、3年間指導者をやってみて、特にこの学生スポーツはメンバーが毎年入れ替わって行く中で、チームをコンスタントに強化していく事の難しさを非常に感じています。学生コーチのサポートはありますが基本的には1人で指導を任されており、次年度の主力を担うBチームの強化不足が顕著に現れていて好サイクルを生み出せていません。それとコロナ禍においては頻繁に活動がストップしてしまい、強化の時期に練習が全く出来ずにほとんどぶっつけ本番で公式戦に臨まざるを得ない為、現在の状況下で強化していく難しさをこの2年間ぐらい感じています。だからこそ、チームのやり方も色々変えながら、強豪チームと渡り合えるように色々努力してやっている状況ですね。

ーー海外でプレーして環境も日本とは違ったと思うんですけど、それが今指導するにあたって活きている事はありますか?

 サッカー面というよりかは、チーム全体をマネージメントしていくところと、選手の人間的側面に対して関わっていくところに凄く役立っているなと思います。どれだけ日本人が恵まれた環境で育っていて、どれだけ細かいところを気にし過ぎているか。日本社会で生活していく為には規律面を遵守する指導も必要になり学生にも伝えますが、世界から見たら日本がどれだけ細かいルールに縛られているかってこともわかるようになりました。なので、僕自身は日本人が大切にする協調性であったり、ルール遵守も重要と思う一方で、日本の当たり前が海外では当たり前ではないという事も頭の片隅において考えるようにしています。

 学生と接する時もそういう細かいことも大事ですけど、人間として楽しく人生を過ごす事や自分の好きな事を追求する事の方がもっと大事なことだと思えるようになったので、そういった視点は広がったなと思います。これから社会に出ていく学生達にはそういったこともしっかりと学んでいって欲しいなと思います。小さい考え方で縮こまっているんじゃなくて、広い視点で考えられるようになって欲しいなと思います。

 次回は現在のチームの取り組みなどについての話を紹介する。

 (文=会田健司)