ーー選手のスカウティングやセレクションの際は、どういった点を重要視しますか?

 他大学では年に1回とか、やらなかったりするところもあると思いますが、ウチは年に数回セレクションをやっています。セレクション以外に、どんな時期でも練習参加を認めています。一週間くらい寮に宿泊して参加したり、日帰りで一日だけ参加したり、獲得目的ではなくて高校1年生や高校2年生であっても、指導者の方から「ちょっと預けてみたい」とか「大学のレベルを肌で感じさせてほしい」などとお願いされた場合は、基本的に練習に参加させています。ウチの練習に参加はしたけれど、他の大学に入学した選手もたくさんいます(笑)。

 もちろん能力があるに越したことはないんですけど、将来的に「この選手はここを伸ばしたら良くなりそうだな」など、「素材的」なところをチェックしています。ウチの場合は、チームとしてはそこまで強くなくて比較的無名な選手ではあるけれども、「潜在能力は凄い」という選手を重点的に見ています。だいたいみなさんメジャーな高校はよくチェックされますが、あまり人が来ないようなところに凄い選手はいたりするんです。いまは多くの指導者の方がライセンスを持っていて日本全国でしっかりした指導をされていますから、名の知れない高校の選手でも素晴らしい選手はたくさんいます。

ーー練習や普段の生活で、監督自身、また選手たちはコロナ前とコロナ後で変わったことはありますか?

 私は現在まで、流通経済大学で22年間指導しているんですけれども、去年がいちばん学生の成長を感じたシーズンでした。今まで当たり前にサッカーに携わってきた学生たちが、これほど長い間練習ができないとか、大学生としてのキャンパスライフなども送れない、リーグ戦も、試合にかかわっていない部員は会場で見ることができないし応援もできていないんです。それくらい、当たり前にやれていたサッカーができなくなってしまったので、「何のために自分はサッカーをやっていたのだろう?」とか「大学に何をしに来たんだろう?」とかを本気で考えるようになったと思います。これほどまでに苦しいコロナという状況を経験したことで、彼らは人として成長しました。今までは当たり前にサッカーができ、自分たちがいかに恵まれていたのかということを再確認できたのではないかと思っています。

 次回は中野監督が指導者として大切にしていることや印象に残っている選手についての話などを紹介する。

(取材=高校サッカードットコム編集部)