大阪国際大学の長野崇監督(写真=大阪国際大サッカー部提供)

ーー他にも大阪国際大学サッカー部の特徴はありますか?

 ゲームやトレーニングが終わったらすぐに解散します。僕は終わってから喋らないんですよ。言いたいことは練習中や試合中にすべて伝えることを意識しています。イギリスで学んだ知見の中に、「Coaching in the game !」という言葉があります。より現実的なコーチングを求めるのであれば、選手が最も理解しやすい現場で、さらにその場で伝えることが有効です。よって精一杯頑張って試合や練習を終えた選手に対し、長々と話すことは止めて、直ぐに帰れるように働きかけています。

 高校でお腹がいっぱいになってから来る子が多くて、そういう選手は、"伸びきったゴム"状態になっていて、引っ張られすぎて伸びきってしまっている。もうサッカーに対するモチベーションがなくなってしまっているんです。だから、それぐらい考えたり、振り返る余力を残した方がいいと思うんですよね。

ーーサッカーのスタイルで特徴はありますか?

 攻撃は自由です。ただ、「ここのエリアではそういうプレーはダメ」とは言いますね。特に自陣のビルドアップに関しては相当言いますけど、向こうの陣地に入ったらほぼ自由ですね。ゴールを目指さないプレーには「ゴールに向けて赤いじゅうたんが敷かれている!」とゴールに直結するプレーを強く要求しますけど。ゴールから逆算して、最適なプレーを選択していく「ダイレクトプレー」という概念は、本学の戦術ではなくサッカーの基本です。よって原理を学び原則に従うことは強く指示しています。

 逆に守備に関してはみんなで話し合って決めるものじゃない。それは監督が示すものであると思っていますね。どこでボールを取るのか、いつ行くのかというのは、そこはある程度言います。選手にも委ねるんだけども、そこはやっぱり指揮官がちゃんと示さないといけないなと思いますね。「これだけは従ってね。今日はこれでいくから」とは言っていますね。

ーー社会性をすごく重視されていますが、そこも特徴ですよね?

 そうですね、例えば髪は原色以外禁止。ピアスも禁止にしています。個人的には金髪でも何でもいいと思っているんですが。ただ、グランド使用料、バスでの移動費等、大学の手厚いサポートを受けて素晴らしい環境でサッカーを行うことができています。強化指定クラブは、他のクラブを差し置いてグランドを独占するんです。だから全ての大学関係者に応援してもらえるような人材になって欲しいと伝えています。この国では、未だに毛染めやイヤリング、体育会系のパーマに違和感を抱く方が多く存在します。学生らしく、清々しく最後のサッカー人生を全うしてほしい!そして最後に、サッカーをやってよかったと振り返ることができる人生にして欲しいと強く願っています。

ーー―長野さん自身の夢や目標を教えてくれますか?

 教え子と飲みに行くことですかね(笑)。それだけのためにやっていますね。今の指導法の答え合わせがそこにあると思っています。卒業式で涙を流して感謝してくれることは嬉しいんですけど、それがゴールではないと思っています。この間も卒業後警察官になった学生が帰ってきて、「監督から報連相をうるさく言われていたから警察学校が全く苦じゃなかった」と言ってくれたんです。そういうのが本当に嬉しいですね。我々の教育の真の成果は、社会に出てからの卒業生の優位性にあります。この大学で培ったスキルやマインドが、社会人として如何にして活かされているかを検証すること、それを次なる教育に活かしていくいことが、私の最大の責務です。「学び続けることを辞めたら、指導者は教えることを辞めなければならない」。大人になった教え子たちからの強烈な「つっこみ」を肥やしに、老体に鞭打ちグランドに足を運びます。

 (文・写真=会田健司)