福富信也氏

ーーヴィッセル神戸が2020年天皇杯を優勝し初タイトルを獲得。ここにも福富さんのお力添えがあったと聞いています。

 チームの結果が良くない時期で、中断期間を利用してミニキャンプをやるから来てくれと三浦淳寛さんから連絡をもらって。僕が講師で関わっていたS級コーチ養成講習会で三浦淳寛さんと当時監督の吉田孝行さんが同期で、僕も親交があった。
 連絡をもらったのがキャンプ直前だったのもあって、短い期間で明確にチームへ結果を齎すに辺り、「自分に何を期待して、チームとしての課題が今何なのか、何をクリアにして欲しいか教えてください」と注文を出した。三浦淳寛さんからも具体的なお話を聞けて、処方箋が浮かんだので手伝った。
 でもその年はリージョ監督から始まり、吉田孝行さんに監督交代、ビジャが新加入で来たり、ポドルスキーやイニエスタも居て、考えることが山ほどあるわけよ(笑)。
 多国籍軍ということもあり、限られた時間の中で通訳とも内容を合わせなきゃいけない。通訳を介してやることで時間も通常の倍掛かるから、いかに短時間で明確にポイントをずらさず伝えるか、行動の変化を生み出すかって事を凄い考えたよ。

 持ち時間を半日もらった中で色んなプランを考えた。結果、1時間ちょっとやって、もうこれで大丈夫だと確信できて、これで終了!って終わりにした(笑)。
 彼らが変われる感触があって、色々準備はしたけどスパって止めた。持ち時間は半日あるから、これで結果が出なかったら問題だなとは少し思ったけどね。
 そのキャンプ中、今まで初めてだったらしいんだけど、大勢の選手でボーリングに行ったんだって、イニエスタも含めて。それが目に見えて分かりやすい変化かな。
 サッカーチームでその変化必要?って思うかもしれないけど、色んな物差しで皆を見てみるとか、意外な一面に触れてみるって大事なんだよね。人間的な結びつきがある上でサッカーをしたらもっと強くなると思う。

 信頼関係もコミュニケーションの上に成り立つと思う。ちょっとした会話で手ごたえを感じて信頼関係に結び付くし、それを繰り返すことで信頼関係は強くなるから、まずはコミュニケーションを1つでも始めないと次はない。だから、チームでボーリングに行けたっていうのは良いことで、そこで取ったコミュニケーションで手ごたえを感じた人は、次ロッカールームで軽い冗談が言えるかもしれない。それが出来れば今度はピッチ上で意見が言えるかもしれないし要求できるかもしれない。

▼著書

プロフィール

1980年3月生まれ。
横浜F・マリノスコーチを経て、2011年に東京電機大学理工学部に教員として着任しサッカー部を監督として指導。
日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、近年では上田西高校の選手権ベスト4進出(2018)や、ヴィッセル神戸天皇杯優勝(2020)など、幅広い対象へのチームビルディング指導を行う。
サッカー界のみならず、スポーツ全般、幼~高までの教育分野、企業などへの講演、研修会、セミナーなども多数。
2015年5月、組織論を主としたスポーツ指導、講演や執筆などの事業を展開すべく株式会社Humanergy(ヒューマナジー)を設立。