東京電機大学理工学部サッカー部監督・ヒューマナジー代表 福富信也氏

 2022年末、日本を熱狂の渦に巻き込んだサッカーW杯。ドイツやスペインといった“格上”を撃破し、決勝トーナメントに進出した日本代表について、東京電機大学理工学部サッカー部監督を務める福富信也氏に話をうかがった。福富氏は、サッカーをはじめとしたチームスポーツの強化にかかわる「チームビルディング」の専門家で、株式会社ヒューマナジー代表でもある。今回はそんな福富氏に、独自の観点から森保ジャパンのベテランと若手の融合、チームの完成度やチームの姿などについて意見を聞いた。

ーー今回の“森保ジャパン”は初出場の選手も多かった印象でしたが?

 メンバー26人中、確か19人、7割強が初出場なんですよね。そこもある意味で勇気のある決断というか。どっちに転ぶかわからないじゃないですか。初出場で浮き足立ってしまう可能性もありますし。ただ、初出場といっても多くのメンバーは世界の5大リーグで戦っているので、「俺たちは世界的な選手たちと日常的に試合してるよ」という感じで、物怖じしないと踏んだんでしょうね。そういう意味では、思考や意識レベル、日常のリーグレベルも高い基準で同質性が担保されているというか、初出場であることをリスクと捉えなかったのかもしれませんね。

 それと後ろ(守備陣)は吉田麻也選手、長友佑都選手、酒井宏樹選手などベテラン勢が多かった。逆に初出場のメンバーは攻撃側に多く選ばれていた。後ろの選手はW杯を知っていて、チームを落ち着かせることができる選手の方が無難でしょう。ただ、W杯を何度か経験しているベテラン勢はベスト16の壁を超える難しさを知っていて「ベスト16の壁を越えるのは簡単じゃない」というバイアスがかかってしまっている可能性もあります。もちろん、選手たちにそんな意識はないでしょうけどね。そのぶん攻撃陣にはW杯初出場の若手を選んだ。「世界を驚かしてやろう」とか「ベスト8行けるでしょ!」という野心を持っていて、先入観のない若い選手の勢いに期待したところもあったのかなと思いますね。

【次のページ】 東京電機大監督・ヒューマナジー代表 福富信也氏#4「負けた時にチームの本当の姿が見える。その点において森保ジャパンに不協和音はなかった」(2)

▼著書