都立多摩工のキャプテンMF長澤颯太は体を張りつつ、チームを鼓舞し続けた(写真=多田哲平)

 ところが攻勢を強めた後半も、都立多摩工の守備網をなかなか破れない。ゴール前まで進入しても、あと一歩のところで、相手の守備陣にことごとくシュートを弾かれていった。

 45分のCKから得たDF4宮本空(3年)の反転シュートも相手GK鈴木大翔(2年)にストップされ、49分と70分のMF14岡田一汰(2年)のミドルシュートもコースを限定されてゴールを捉えられず。76分にも2本立て続けにシュートチャンスを得るも、いずれも相手守備陣のブロックにあった。

 刻一刻と時間が過ぎ敗戦の気配が漂い始めたが、それでも終了間際の80分に、ついに都立戸山に待望の瞬間が訪れる。

 左サイドでボールを持った坂巻からファーサイドに絶妙なクロスが送られると、これに途中出場のMF7斎藤桜太郎(2年)が頭で合わせた渾身の一撃が、ついに都立多摩工の牙城を打ち破ったのだ。

 土壇場で1-1に追いつき突入したPK戦では、相手の1人目のキッカーをGK1中山千博(2年)がストップ。これで精神的余裕を得たのか、都立戸山は4人目の宮本までが成功。3本目も失敗していた都立多摩工にトータル4-2で競り勝った。

 粘り強く勝ち切った都立戸山は、2回戦で本郷と相まみえることになった。

 一方の都立多摩工は『グッドルーザー』と呼ぶに相応しい健闘を見せた。虎の子の1点を守ろうと、チーム全体が運動量豊富に連動してボールホルダーを複数人で囲い込み、終盤まで堅固なブロックを構築。とりわけDF3長澤琉太(3年)とDF5牧野匠紀(2年)のCBコンビ、ボランチでキャプテンのMF2長澤颯太(3年)は体を張って相手のシュートを阻止し続けていた。ベンチメンバーを含めて14人と少ない人員でも、まさにチーム一丸となって戦った。PK戦に敗れても、GK鈴木のもとに全員が駆け寄る姿に、好チームの証を見た。

(文・写真=多田哲平)

▽第101回全国高校サッカー選手権東京予選
第101回全国高校サッカー選手権東京予選