――色んな知識を注入した上で、選手に選択させることが大切なんですね。
そうですね。やっぱり、教えなければ、プレーの選択はできません。なので、教えることが大切です。また、指導者も教える作業はワクワクするんです。以前、中学校などで講演会を行う機会がありました。「プレゼント精神」というテーマでよく話をさせてもらったのですが、サプライズで誰かに何かをプレゼントする際は渡す側も楽しいんです。それと一緒だと思うんです。逆に「どんなプレゼントをしてくれるんだろう」と楽しみに待っている人はいませんから。あと、自分が大切にしているのは、次の世代に繋げる作業です。選手たちに頻繁に言うのですが、「インタビューを聞いた小学生と中学生がうちにきたいと思うか、次の世代に残るかどうかを考えて話しなさい」と言っています。2012年の高校サッカー選手権3回戦で旭川実と対戦し、PK戦を3−0で制しました。その際にGK添谷舞樹がPK戦で相手のシュートを2本止めて、その後のヒーローインタビューで「南先生に飛ぶ方向を全部教えてもらい、勝つことができたので良かったです」と言ったんです。その添谷の発言がチームにそういうイメージを作ってくれたんですね。色んな意見がありますが、青森山田が強いのは毎回挨拶の仕方や立ち振る舞いは同じだからです。チームのカラーを作って、次に繋ぐ作業も大切なんですよね。
――最後に今年のチームについて教えてください。
僕が甘いだけなのかもしれませんが、今年のチームは絶対に良くなると感じています。毎年、チーム状況は異なりますが、今年は一生懸命やってくれる子供たちが揃っているんです。頑張れるし、成長したいと思っている選手がとにかく多い。3年生の山田和樹もOBで兄の祐樹(びわこ成蹊スポーツ大)と比べ、特別な武器を持っていないことを本人も分かっていますが、向上心が高いプレーヤーです。他の部員もそうですが、特出した才能のある選手に追い付くために真似するのではなく、チームで戦う気を持った子供たちがとにかく沢山います。だから、自分は今年のチームは強くなると予感しています。2015年に東福岡が2冠をとった際は謙虚な姿勢を持った子供たちがたくさんいたと聞きましたが、その世代と似ていると感じているので、頑張りたいと思います。
(取材・写真=松尾祐希)