立正大淞南(写真=松尾祐希)※写真は自粛以前に撮影
島根県にある立正大淞南。山陰の強豪校の門を叩く生徒たちで、中学時代に世代別代表に選ばれた経歴を持つ者はほとんどいない。しかし、継続的にJクラブや名のある大学に選手を排出している。いかなる指導で選手たちは成長を遂げているのか。前編に続き、チームを率いる南健司監督が明かす指導論に迫る。
――教え込む中で、選手の考える力はいかにして身に付けるべきでしょうか。
大学時代、自分は日本体育大でプレーをしていました。当時の読売クラブ(現・東京ヴェルディ)の下部組織出身の選手がいて、練習でびっくりしたんです。1タッチ以内で行うトレーニングがあったのですが、「意味が分からない」と言い、「自分はボールを受けて、相手を引き付けてからアイデアを出すタイプの選手。相手が来ていない状況でもダイレクトでプレーしないといけないの?」と首を傾げたんです。「ドリブルする時はするし、どんな時も2タッチというのはよく分からない」と。それで僕は「なるほどな」と思いました。その体験は今の指導にも生きています。今日のトレーニングでシュート練習を行ったのですが、フィニッシュの形だけは決めて、そこまでの過程は人によって違うので制限を設けませんでした。全て右足でバックパスするメッシ、全てトップスピードで突破するイニエスタ。武器を考えれば、そのプレーが求められていないのは分かりますよね。遠藤保仁選手も全てトップスピードで相手に突っ込むプレーはしません。岡崎慎司選手も中盤に降りて球を裁く働きは求められていません。彼はゴール前を突っ込むのが武器なので、そういうプレーが評価されているわけですよね。選手に考えさせる際、教え過ぎるという言葉がよくないと思うんです。サッカーは状況によって変わるので、ベースを教えた上でたくさんの知識を注入してあげる作業が重要なんです。