鹿島アントラーズユース・柳沢敦監督

 日本を代表するストライカーとして長年活躍し続けた柳沢敦。北信越の強豪・富山第一(富山)時代は全国高校サッカー選手権などでひと際大きな注目を集め、鹿島アントラーズでは黄金時代を支えた他、海外でもプレー。2002年の日韓W杯や2006年ドイツW杯では日本代表メンバーに選ばれた。そんな柳沢は現在、鹿島アントラーズユースの監督を務めている。ユース世代の指導に当たって感じる難しさや指導者として大切にしていることなどについて、いろいろと話をうかがった。

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――2019年~20年と鹿島アントラーズユースのコーチ、21年からユースの監督に就任されましたが、ユース世代の指導においての楽しさや難しさなどを感じるのはどんなことでしょうか?

 自分自身もそういう時代を過ごしてプロになった経緯もあるので、高校時代にどういうことをやってきたかというのを選手たちに伝えていくこと、プロの厳しさとか、プロを目指す上で大事なことを経験から伝えるということはすごく大事なのかなと思いながらユースの2年間監督をやっています。

 ただその中で、本当に難しいなと思うのは、多くの選手をトップに上げるということ。それはなかなか難しいですね。高校3年間というスパンの中で、いかに成長させてあげられるかというのは1つの難しさであり、サッカー選手になるためだけではなくて、一人の人間として、社会に出た時に通用するような人間を作るということも大事な部分であると思うので、そこのさじ加減というか、サッカーだけではなくて、オフ・ザ・ピッチのところも含めて、いろいろな指導が育成年代には大切なんだなということを勉強しながら、試行錯誤しながらやっているという感じです。

――現役時代は独自の感覚やポジショニングなどで勝負してきたイメージのある柳沢監督ですが、ユースの監督としてはどういう指導を心掛けているのでしょうか?自分では簡単にできるのに、なかなかできない、伝わらないことなどもあるかと思われますが?

 そういった難しさももちろんありますが、それよりも選手の良さを引き出してあげるということがベースにあって、自分がやってきたプレーを選手たちにやらせるというよりは、選手たちがトライして自分自身で見出していく、選手自身に気付かせるというところが自分の指導方針でもあります。

 そういう意味では新しいチャレンジをする選手に対してはその意欲を的に褒めてあげたいと思いますし、それをしない、なかなかできないという選手に関しては、その原因は何なのかを探すというか。じつはその背景にはいろいろな事情、例えば学校での悩みだったり、プライベートでの悩みだったりが潜んでいる場合があるので、そういった部分も含めて、選手がサッカーに集中できるような、積極的にトライできるような環境を作ってあげることが大切なことだと考えています。とても難しいことではありますが。

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