全国高校サッカー選手権で初優勝した富山第一。決勝では終了直前に2点差を追い付き、延長戦の末に逆転勝ちをしました。劇的な勝利をもたらしたパワーの源はどこにあったのか。自主性を尊重する指導方法やチーム作りの基本方針など、大塚一朗監督にお話を伺ってきました。

――まずチームづくりの基本方針を聞かせてください。

 目標は3つあり、高円宮杯U-18プレミアリーグで残留することが最優先。あと2つがインターハイと全国高校サッカー選手権に県大会を勝ち抜いて出場することです。そのうえで、できればベスト8ぐらいまで勝ち進みたいと考えています。
 戦術の基本は「ボールを奪ってすぐ攻める」「奪われたらすぐ取り返しにいく」「それでも取れなかったらブロックをつくって守る」。そのうえで毎年、選手の特長に合わせてどう攻めるか、どう守るかを考えてチームに浸透させていきます。

 全国優勝した今回のチームはFW渡辺仁史朗(大会得点王)のスピードを生かす攻め方を考えました。前年のFWはポストプレーがうまかったのですが、渡辺は逆に苦手。足もとに預けるよりもスペースに抜ける攻撃を中心にすえました。相手のDFラインを下げることができれば、トップ下の大塚翔にボールが入りやすくなります。そうやって攻撃パターンを付け加えていきました。

――U-18プレミアリーグが最優先とのことですが、こちらを重視している理由はどういったものでしょうか。

 富山県にいながらJクラブのユースをはじめとする強いチームと対戦できる環境は大事にしなければいけません。選手が成長できる舞台だと考えています。また、地元の小・中学生がレベルの高い試合を見る機会にもなります。最高峰のリーグで戦えるチームは限られていて、その中で高校勢はさらに少ない。プレミアで戦っていることをもう少し評価いただけるようになればよいなという気持ちはあります。地元マスコミの関心も選手権に比べて低いのは残念です。

――確かにプレミアで戦えていることは凄い事ですよね。それではリーグを優先するために、普段の練習はどんなスケジュールで進めているのですか。

 練習スケジュールもプレミアをはじめとするリーグ戦に合わせています。日曜に試合がある場合は、水曜に攻撃、木曜に守備を練習し、金曜に紅白戦を行って土曜はセットプレーを確認するという流れ。先に守りが向上すると、攻めの練習がうまくいかなくなる。「今日はうまく攻めることができた」という良いイメージを持って終わってほしいので、先に攻めの練習をやっています。
 紅白戦では試合展開を想定して途中にシステムを変更するトレーニングもします。プレミアでは押し込まれる展開が多く、どうしても守備の時間が長くなるので、守って早く攻める練習は繰り返し行っています。高校同士のインターハイや選手権では相手が引いて守ってくるケースもあります。チャンスを得点に結び付けられるように大会が近づくとシュート練習を増やしています。

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