――一発勝負ではなく、反省もしながらじっくりとチームも作れる。それも真剣勝負で。

 そう。それからホーム&アウェイ。ホームの時は全部準備して、相手をお迎えして、仲間もみんないる中で試合をやる。そういうのも経験しないとわからない。わからせてやるのが大事なんです。今まではおんぶ抱っこに肩車状態で、審判も会場も全部手配してもらったところに出かけてってやりますってなっていた。でもスポーツって本来そうじゃないんです。みんな担い手なんですよ。集まったのが10チームなら10チームでお前のところは会場、うちは審判、お前のところはプログラム、お前は経理なって、みんなで支え合ってやっていく。それが本来のスポーツ文化なんです。
 この文化がきちんとみんなに落とし込まれて歴史になっていくっていうのは50年とか100年かかる。成果が出るまで時間がかかるから、みんなやりたがらないんだけどね。でもどっかで勇気を持ってやらなくちゃダメ。その時に仲間がいないとダメなんです。1人でやろうとしても「お前バカなんじゃないの?」って言われて終わる。俺の場合はそういう仲間が全国にいたましたからね。12年高体連の技術委員長やっていたんだけど、高校生でサッカーをしているのって、4200校15万人いるんですよ。これって仲間だよね。学校の体育、部活ってよく「有識者」って人にダメだとか言われるけど、やっぱり良いと思うんですよ。弊害ももちろんあるよ。ダメな所もある。でも日本はそれでやってきたんだ。教育をしてきた。それが無い国でこれから強化をしようってなるともっと時間かかるよね。

――確かに、強化するぞとなってからの日本のスピードって凄いですよね。号令が上手くかかる、伝わるという事ですね。

 それと、「おかげさま」「支えられている」っていうのを感じられるっていうのは日本の伝統的な良いところ。誰に教えられるでもなく、母親父親がそうだった、って受け継いでいく。これも教育が行き届いていて、そうやって感じられる素地があるからだよね。教育を、学校を「ダメ」って言うのは簡単だけど間違っている。弊害もあるけど、結局一番働いてくれるのは学校の先生ですよ。Jリーグが無い時代、天皇杯にお客さんが全然入らない時代にも高校サッカーがこの国のサッカー文化を支えてきたんだ。高校をないがしろにしちゃいけないんですよ。

――では、これからの林監督の目標や高校サッカー界への夢を教えてください。

 今まで高校サッカー界は、冬の選手権大会が大きな目標であり全てだった。それを少しずつでも変えていきたい。もちろん、トーナメントは否定しない。カップ戦があったっていいんです。要は、色んな形式の試合をして、サッカーを日常にしてほしいんです。
 サッカーには「今日は引き分けでも良い」っていう試合はあるんです。トーナメントだと1点リードしたらそのままガチガチに守るしかなくなるけど、引き分けでもよくなったらちょっとチャレンジできるでしょ。そういう色々な試合を経験してほしい。そうするとサッカーの幅が広がるんですよ。
 それと、チームの全員が公式戦に出られる。これって悪いことじゃないですよね。うちにも暁星のユニフォームを着て、公式戦に、そして選手権に出る。それが目標なんだって入ってくる子たちがいっぱいいるんです。そういう子たちが試合に出られる環境を作っていく。それにはリーグ戦が必須なんです。こういうことを時間かかってもいいから、まだまだやっていきたい。それが日本のサッカー界の未来に繋がっていくんです。