――もう高校の枠を超えている感じがしますね。

 会社みたいな感じですね。我々は青森、東北という土地でいつまでもトップに位置しなければならないというプライドを持っている。だからそこのベースは変えません。

――そのトップを保つために、今の子どもから力を引き出す方法はあるのでしょうか。

 監督とその選手だけの関係だけではなく、他の仲間、友達に意見させる手法は心を動かします。仲間からの声を聴いたときにやるようになる。なぜなら、チームから信頼を失いたくないから。

 チームで指摘しあえる環境を作ると、お互いが意識するようになって自らもしっかりとやるようになるんです。そうなると、道は絶対外れない。そういう環境にいると、子供たちはいつの間にか団結しているんです。我々大人は少し軌道修正をしてあげるという手法で青森山田は成り立っているんです。

常に日本一を狙うチーム

――理想的というか、物凄く大人なチームですが、そこまでなるまでに、時間はかかったのではないですか?

 実際かかりましたね。2000年はインターハイと選手権で全国3位が2回。正直そこまで勝てる選手ではなかったけれど、粘り勝った。でも最終的には累積警告等で選手が足りなくなったんです。ここから選手層は大事だなって思いましたね。他の強豪は出てくる選手みんなが強いんですよ。交代してもクオリティが下がらない。だから部員は多くとらないといけないな、と。ただ、2000年にそこまで勝ったことで、良い選手が集まってくるようになったんです。それで2005年インターハイ優勝、選手権88回大会で全国2位と5年刻みで結果がついてくるようになった。今は電話もひっきりなしにかかってくる。

――全国で勝つことで、チームとしての質が上がる、と。

 間違いない。色々とこだわっていても、勝たなければ意味はない。遠くからわざわざ青森山田を選んでくる選手がいるように、今の子たちは勝ちたいからそのチームを選択していくという傾向にあるように思います。そういう意味でプレミアリーグの存在価値がみられるようになってきたと思います。

――確かにプレミアリーグだと全国大会に常時出ていることですからね。

 ただ残留も本当に大変。アウェーの戦いは全部陸路で青森から試合に行きますからね。コーチがバスで運転していきますけど、よくやってますよ。

――そのたいへんな思いをしてプレミアで戦い、選手からも支持を受けているわけですが、世間一般からの評価はどうしても選手権に絞られます。

 確かに高校サッカーサイドとしては、選手権は「指導者の情熱」とか「選手の3年間の思い出」とか、クオリティよりも涙を流すような感動を欲しがりますよね。Jクラブはあまりそういうのは無いんじゃないかな?そういう、感動を求める習慣からすると、日本には「スポーツ文化」というものは根付いていないのかもしれない。
 でも、そういったものに惹かれるのを否定は出来ない。選手権での感動を求めるためにキツイ練習を強いられたり怒られたりというのを全否定は出来ないんです。苦しい経験をしている子の方がココ一番でパワーを発揮出来ます。だから今のままだとJクラブのユースは、「勝負する力」という点では高体連のレベルには近づけない。間違いなく。実際高体連出身の子が日本代表に残っています。サッカーに限らず怒られ慣れている、聞く耳を持っている人の集まりというのが戦える集団になるんです。

――勝負にこだわるというベースは曲げられないですものね。

 絶対に負けたくない。じゃんけんでも負けたくないですからね(笑)

ありがとうございました。
後編では、青森山田の更なる強さの秘密や黒田監督の指導論を伺っています。