――キックの面で取り入れている練習はありますか。

 大事なのはまずサイドキック。これはメッシにしろクリスティアーノ・ロナウドにしろもっと昔の良い選手にしろ、サイドキックが下手な選手、見たことないでしょ。大事な要素なんですよね。特にアウトサイド。例えば右足のインサイドと左足のアウトサイドって、パスは同じ軌道になる。ボールが左から来たら、左足のアウトサイドの方が速いでしょ、半歩分。だからきちんと操れるようにしないといけない。
 あとはヒールキック。これもうるさく言うんですけど、試合の時には意外と役に立たないんです。役に立つまでにはなかなか上達しないから。でもやらないよりはいいでしょ。だからやらせる。

 パスアンドゴーをやったりトライアングルやったり、ルーティンで毎日やっています。寄りながら、バックステップしながら…。そういうスキルを身に付けるのが大切ですね。
 だからうちの選手、1対1は強いんですよ。狭い中でプレーしているから余計に。GKだって至近距離のシュートにはものすごく強い。限られた環境の中で少しでも良くしようというのは考えている。都内でグラウンドに人工芝を張ったのも一番早いし、それも新しいものが出ると良いものにしてもらった。コンピューターは出来ないけどそういうのを偉い人に掛け合うのは得意だからね(笑)

――選手たちの事を本当に深く考えている。そんな林監督の下でプレーする選手は大変だけど幸せですね。ものすごく人間的に鍛えられそうです。

 俺が、っていうんじゃないね。伝統っていうのは生徒たち自身が培っているんだよね。先輩が医者になり東大に行き、ってそういう状況なのが自然になっている。そういうのが身体に染み込んでいるんじゃないかな。それは素晴らしいと思う。これって暁星だけじゃないんだよね。それぞれの学校でそういうのがある。都立って指導者が変わるからなかなか難しいんだけど、やっぱり色はある。私学は大体同じ監督がやっているわけだから、そういう特色みたいなものが出てくるよね。
 俺んところは、学生は第一が勉強。これはもう変わらない。第二がサッカー。でも第二と言っても普通の二番目じゃないぞ。他の学校の『第一』以上のものを見せよう。それ以上の気持ちでやるぞって生徒には言っているし、生徒たちもそうやってプレーしていますよ。

――ありがとうございます。「林イズム」が浸透し、サッカー界を支える人材を次々世に送り込むチーム。そんなチームで短いけれど、濃密な時間を過ごせる高校生活は、何にも代えがたいですね。
後編は、リーグ戦についてお話を伺いました。サッカーを本当の意味で文化に、そして日常にしていく。そのための取組に日々奮闘している林監督の想いとは?近日公開予定です。