都立東久留米総合高校・齋藤登監督

――ところで、先生が高校生を指導する中で注意されていることはありますか?

 高校生を指導するにあたって・・・可能性ですかね。もともとみんなサッカープレーヤとして良い素材をどこかに持っている。足りないものばかりに目をやり、その可能性を見落としてしまうことはあってはならない。わがままで自分が思ったことしかやらない人間でもなにかいいところを見つけてあげる。可能性を信じるっていうか、かっこいい言葉ですけど。昔々映画解説者で淀川長治さんていらっしゃったのを知らないですか?その人の講演を若い時に聞いたんだけど、「人はね、欠点を持っているけれども、必ずどんな人間でも長所がある」と。だから本当になんだこのやろうって思うやつでも、後をつけていったらトイレのスリッパきっちり揃えてあるみたいな。そういうところを見つければいいところを認めてあげられる。そいうい人との付き合い方が大切なんじゃないですかということを20代のころに聞いて、やっぱり人の長所を見るように、欠点ばかりみて嫌いになるんではなくて、なにかこう可能性見つけてあげるのが大切だなと。

 特にうちの子たちはサッカーが好きなんだけれど、小学校中学校でしっかり指導されていない子が多いんですよ。素材はいいのにしっかり指導されていない。だから、私立高校のセレクションなどに行っても直ぐに落とされちゃうやつばっかり。でも何かきらっと光るものがあって、それを伸ばしながら、不足の部分、課題を解決して育ててあげると3年間でやっと都の上位で戦えるような選手になる。だからうちは毎年3年生が主力なんですよ。今もレギュラー11人全部3年生。ベンチ入りするのも全部3年生。去年も一人だけ2年生、今のキャプテンの子がいただけで、毎年毎年3年が主力。それを僕は誇りに思っていますね。平凡な子たちが集まって育てて成長して3年生になってやっと戦える。そうでありたいと思っているし、そのために可能性を見つけてあげるてことを気を付けてますね。

 長年やっていると、1年生の時に箸にも棒にも引っかからなかったやつが3年生になってぐぐぐぐって伸びるんです。それが一番うれしいですよね。まあ逆に期待していても伸びずにダメになっちゃう子もいて全員が全員育てられるわけではないですけど。過去に何人もこの3年間で伸びる子たちを見ているんで、そういう思いを持っています。結構、高校生になると固まっちゃってる子が多いんですけど、うちの子は教わってない子が多いから染み込みが早いんですよ。どんどんスポンジのように染み込んで伸びていく。高校生でも可能性があるんだなって感じますね。

――(1ヶ月間の工事を経て)人工芝がすごく綺麗ですね!やりがいありますね。

 そうですね。久留米高校時代は土のグランドをいつも整備して、ライン引いて大変だったけど。やっぱり芝になったらボールを蹴りたくなりますよね。

――なりますね。

 土のグランドだとやっぱりストレスじゃないですか。でも芝だと言い訳がきかない。久留米高校時代は自主練だった朝練を今は週に2回やっています。今日やったようなパストレーニングをやるんですよ。とにかくパスだ!パスだ!パスだ!と。だからトップチームだけ週に火水の2日間、朝と夕方の2部練習をしています。

――土日も基本的にはフルでサッカー部が使えるんですか?

 そうですね。ただ市のサッカー協会の人にも本校の活動に対しすごく協力・応援をしてもらっているので、近隣の方々にも恩返しすると言うことで施設開放をしています。土日祝日は夕方5時以降、小学生、中学生、社会人がたくさん来てサッカーを楽しんでいます。だから休みの日は朝から夜9時までずっとグランドを使っています。使用頻度はすごく高いですよ。東久留米市は野球場とか、ちょっとした運動場とかあっても、サッカー場と呼べるものが一切ないので、ここが東久留米市のサッカーの中心地と言うような意識もあります。ここでサッカーを始めた小学生・中学生が高校・大学を経て最後はまた地元の社会人チームであるFC・フエンテ東久留米に入ってくれればなと。将来的にはJチームになりたいっていう夢を持っているので、まあそういった地域の活性化にも繋がるような貢献というか関わりができたらいいなと思っています。

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