――続きを聞かせてほしいところですが、先に進めましょうか(笑)。播戸選手がスパイクに求める機能は? 最新のスパイクには、魅力的なキャッチフレーズのついたものがたくさんありますけれど。
新しいスパイクも、もちろんいいと思います。グリップ力があったりとか、軽かったりとか。いいんですけど、何かね、グリップがあって止まり過ぎることによる身体への弊害とか、そういうこともあるんですよ。
――スパイクの機能で強引に身体の動きを止めたら、確かに身体に負担がかかりそうですね。
30歳くらいのときだったかな、プーマのスパイクを治してくれたりしている方と話をしたときに、パラメの丸いポイントは、身体の負担が一番無いですよと。しかも、ポイントがあまり高くないのがいいんです、って。ポイントが高いとそのぶん負担もかかるから、30歳を超えてからはこれぐらいが一番身体にいいですよって、その方に言われて。 確かにそうやなあっ、て。そんなに大きなケガもしたことないのは、スパイクに助けられているのもあると思うんです。 イマドキの新しいものはだいたいポイントがタテで、あれ、あんまり滑らないんですよ。グリップ力はあるけど刺さり過ぎるから、膝とか中足骨をやっちゃったりする。全部がスパイクのせいじゃないですけど。パラメは滑るところでは滑る、危ないところでうまく足が抜けるから、ケガをしにくいっていうのが僕の感覚ですね。 じゃあ、グリップ力がないんかっていったら、別にそこで勝負せんでもいい。このポイントでもうまくやれるように、身体を使ったりすればいい、というのが僕の考えです。基本的に僕は、スパイクを気にしたくない。無頓着なわけじゃなくて、こだわっているがゆえに、気にしたくないって言うのかな。そこに自然とあるもの、裸足の感覚みたいなほうが、いちいち気にしなくていいじゃないですか。グリップ力とかも、これがノーマルだと思えばいい。これが普通だと思っていれば、何も気にならないですよ。
取材協力:大宮アルディージャ
取材:戸塚啓 写真:清水知良