関西サッカー協会2種委員会 古井成知委員長

【後編】

 今年から2部制が復活するプリンスリーグ関西。昨年は優勝した履正社がプレーオフを勝ち抜きプレミアリーグに昇格。興國から川崎フロンターレに進んだMF永長鷹虎や、阪南大高から湘南ベルマーレに進んだFW鈴木章斗など、数多くの高卒プロ入り選手も誕生している。そのプリンスリーグ関西を運営する関西サッカー協会2種の古井成知委員長に2部制復活の経緯や、コロナ禍での運営についてなどのお話を伺った。

ーー関西サッカー協会で2部制の他に今取り組んでいる事はありますか?

 そうですね、大阪のFA(府リーグ)もそうですし、リーグ戦が日常になったことでレフェリーが足りていないという事があります。単純に人員が足りないという事もありますし、レフェリングの技術が追い付いていなかったり、どの地域も抱えている問題だと思うんですが、そこは難しい問題ですね。

 プリンス関西の場合は2部制にした事でアシスタントをチームから出してもらう形になります。何とかそれで予算面もクリアできればと思っているんですが、リーグでチームが強化されるのは当然ですが、リーグを通じて若いレフェリーの育成もしていかないといけません。ここで経験した子が将来Jリーグで笛を吹いているだとか、そういう風になっていければと思っています。

 やっぱり下のカテゴリーなんかでは、レフェリングに対して「なんでや!」ってなるシーンは増えてしまうとは思うんですが、上に行けば行くほど勝負にこだわる事も多くなるので、一つの判定に対しても色々意見が出ると思うんです。そこはなんとかチームの方にもレフェリーを育てる目線も持ってもらって、時には試合中に言いたくなる場面もあると思うんですけども、そこはグッとこらえてもらって、試合後に上手くコミュニケーションをとってもらえればと思っています。そういうレフェリーの数や質の向上の部分も関西全体で取り組んでいきたいですね。

ーーレフェリーの環境改善や質の向上も難しい問題ですね?

 プリンスは開幕前に監督会議も予定されていますけども、そこでチームの方にも協力をお願いしていこうと思っています。プリンスはアセッサーが入っている事も多いので、フィジカルコンタクトの基準だったり、色んなことを第3者も入って検証していきたいですね。全国大会を観に行っても青森山田のフィジカルなんて強烈でしたもんね。阪南大高も僕らの中ではフィジカルは強いと思ってましたから。

ーーこのコロナ禍で運営も日程の調整などが大変だと思いますが、そこはどう対応していますか?

 チームから電話が来ると"ドキッ"てするんですよ(笑)。それでも日程調整の面では、チームに理解を頂いて協力もしてもらえたので、関西は感染者数も多かったんですが、昨年のプリンスは全日程を終えることが出来ました。チームによっては過密日程になってしまったりして厳しい日程になってしまったんですが、みなさんに協力して頂いて本当に助かりました。

 今はコロナですが、以前に台風で日程が狂った時があって。その時はどこに日程を組むとか、グラウンドをどこにするかとかが大変で。その時に「うちもグラウンド出せるよ!」と皆さんが協力してくれて、今は人工芝の会場を持っているチームも増えたので、そこは対応できるようになってきています。

ーー台風の時はJグリーンが使えなくなって各高校での開催になったこともありましたね?

 あの時は吐きそうになりました(笑)。僕が委員長になってからは災害が多くて、地震があったり、大雨があったり、それでコロナなんで。でもあの台風の時に日程を組み替えたことで仕組みも出来たので、日程を組み替えたり会場を確保したりすることには慣れました。でもそれも僕が何かをしている訳ではなくて、高体連で言えばそういう時はすぐに先生方が集まって協議してくれて、関西で言えばチームが会場を用意してくれたり、皆さんに支えられてやってこれているので、本当にありがたいですね。

 僕が委員長に就任した時に一番不安だったのが、一気に若返った事もあって年上の方から色々言われるんじゃないかという事だったんですが、それもほとんどなくて。それは前任の委員長だったりがしっかり道慣らしをしてくれたおかげだと思っています。年配の先生方も協力してくれますし、今は若い子が運営の面でも色々やってくれていますので、僕らももっと良い運営をしていこうと思っています。

ーーそれだけ色んな方と関わって古井さんの世界が広がったと思うんですが、それによって考え方が変わったことはありますか?

 いえいえ、「古井って誰?」って方も多いですよ(笑)。自分ではよくわからないんですが、影響は大きいと思います。学校って狭い世界なので、こうやってサッカーに携わって、運営をやらせてもらって、全国の高体連の方と関わらせていただいて、こちらも"ありがとうございます!"と思っていますし、色んな方から感謝して頂けるので、本当にありがたいですよね。

ーーでは、最後に古井さんの夢や目標を教えてください?

 早く職を下りたいです(笑)。まあそれは冗談として、僕が委員長の間に"選手権の優勝旗を持ち帰りたい!"とは思ったりしますよね。それは大阪としてはもちろんなんですが、近畿としてもなんとか達成したいです。関西としてはプリンスでプレーしていた選手が、大学に行ってからでもJや世界の舞台で活躍して欲しいです。その頃には僕はもうこの立場ではないとは思うんですが。それは選手だけではなくて、レフェリーもこの環境で揉まれることによって、10年後でもJや世界の舞台で活躍してくれたら、"やっていて良かったな!"と思えるのかなと思います。

 あとは責任の部分で次の世代に引き継ぐ責任があります。ただ、学校行事などもあって業務が多くなってしまっている中、家族との時間なども大切にしたいと考えています。現状ではなかなか両立ができていませんが(笑)。一極集中の良いところもありますが、業務の分担化も今後検討して上手く次の世代へと引き継いでいければいいのかなと思っています。

 (文・写真=会田健司)