新刊を手にする水戸ホーリーホック取締役GM 西村卓朗氏

ーー失礼ながら規模として水戸ホーリーホックはそれほど大きくはないと思うのですが、「もっと強化予算が欲しい」など難しさなどは感じられていませんか?

 じつはこの3、4年、J2のチームからJ1にいちばん多く選手を輩出しているのは水戸ホーリーホックなんです。コンスタントにJ1へ選手を送り出しています。それは何故かというと、水戸ホーリーホックは予算規模は大きくない中でも、1人ひとりの選手との向き合い方がしっかりしていると。「どうやったらいい選手になれるか?」という方法論などを選手に対してしっかり施しているということだと思うんです。その結果として選手の能力が高まっていく、成長角度が上がっていくと。

 そういうこともあり、規模的には大きくない中、2018年以降J2では中位をキープできているのかなと思います。昨年こそ13位でしたが、複数の選手が移籍金が発生するような形で移籍しています。ということはやはり選手が成長しているということだと思うんです。選手の成長がチームの成長、躍進につながっていく。このサイクルやロジックを水戸ホーリーホックは持っているということだと思うんです。この辺りの内容は、先日刊行された世界で最もヒトが育つクラブへ「水戸ホーリーホックの挑戦」(竹書房)に書かれてあるんですけれども、そういうことをやっている、特徴のあるクラブであるということです。

ーー水戸ホーリーホックユースもプリンスリーグ関東2部に昇格しましたが

 育成の方も、今年度中にユースの練習場ができる予定です。ハード面がしっかりしてきたとともに、私が強化部長に就任してからも複数の選手がトップに昇格しているなど、成長が続いています。

 ただ、昇格してから「試合に出る」ということにはまだまだ至っていないので、彼らの成長角度をどうやって高めていくかなど、アカデミーの質という部分に関してはもっともっと上げていかなければいけないと思っています。

ーー最後に西村さんの今後の目標を教えてください

 2022年のカタールW杯に出場して得点を記録した前田大然選手(セルティック)が、2017年に松本山雅さんからレンタルで移籍してきました。もちろん松本山雅さんからのレンタルではあったんですけれども、前田選手は「水戸ホーリーホックに移籍したことは1つの大きなきっかけとなった」ということを言っています。それまでのキャリアハイの試合数をこなしてキャリアハイの得点を重ねたということが、彼の市場価値を一気に高めたと思うんです。

 そういうようなことを含めて、世界で活躍できる選手を育てていきたいということはありますね。我々はJ2のチームですけれども、今回のカタールW杯に選出された選手の中でもJ2を経験している選手はかなり多いんです。そういう意味においても、今後我々の立ち位置としては、J1を目指す中で、より若い選手が活躍するようなチームにしていきたいと思っています。J2経由でも世界のクラブチームに移籍するような選手を作りたい、育てたいと。「世界で活躍するような選手をどうやって育てていくか」ということを近年中に作り上げたいと思っています。

 高校年代の選手でJ1のチームに行けるような能力を持った選手が、あえてJ2のチームを選んで、しっかり成長してからJ1に行く。やっぱり高卒の選手がすぐJ1の試合に出場するというのはなかなか難しいケースだと思うんです。そういう育成をしっかりできるクラブとして今後もやっていきたいと思っています。

 水戸ホーリーホックではどんなことをやっているかということもフルでオープンしていますし、他のチームがやっていないことをかなりやっています。他のクラブが我々に追随していろいろな取り組みをしていくことで、日本サッカーのレベルが上がっていくことにもつながりますし、そうなれば我々はより新しいことに取り組んで世界で活躍する選手たちを作っていく。我々としてはそういったことを目標としています。

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