2009年にJ1昇格を決めた試合後の一枚©︎SHONAN BELLMARE

ーーとはいえ坂本さんがSDに就任した辺りからJ1に定着し、ルヴァンカップなども制しています。結果を出していることについて、どういったところが成功しているのかなと感じていますでしょうか?

 成功しているかどうかはわからないのですが、「選手やスタッフを大事にするクラブでありたい」という考え方は持っていて、もちろん契約満了になる選手はいるんですけれども、自分がGMをやる以上、選手が湘南に来たいと思ってくれる、湘南でプレーしたいと思ってくれるような土台作りをしたいと思っています。

 最近では誘った選手は比較的湘南に来てくれているというか、来てくれる確率が上がったというか、「選手を大事にする」とか「クラブのスタイルを大事にする」という部分が少しずつ形になってきているのかなとは感じています。そういう意味では、それが成果かなとは思うんですけれども、それがしっかりと順位に結び付くようには、これからしていきたいと思っています。

ーー選手だけでなく、例えば監督の招聘に関しても坂本さんの仕事だったりもするんですよね?

 そうですね。そういう部分にもいろいろと気を遣ったりします。ただ選手、スタッフで50人くらいいるので、全員を完璧に見渡すのはほぼ不可能。見逃している部分もたくさんあって、落ち込んでいる選手に気付いてあげられなかったりというのはしょっちゅうありますね。「この仕事は難しいな」と思いながら日々やっています。その精度が高ければ良い仕事だと思いますし、そういう部分はフロントとして大事な要素なんだろうなとは思っています。

ーーピッチの外から選手を見るという今の仕事上で、「こういうところをよく見るようになった」という部分はありますでしょうか?

 プレーの部分というのは見ればある程度わかるんですけれども、どちらかというと選手の心の動きというか、心の機微を見逃さないようにしようとは思っています。「彼はちょっと不満を持っていそうだな」とか、逆に「いま彼は試合には出ていないけれどすごく充実していて、そのうち頭角を現すだろうな」とか、いろいろな選手のメンタル面を予測しながら見るようにはなりました。調子が良い悪いというよりは、「心の中で何を思っているんだろう、何を考えているんだろう」という目線で、自分なりに選手を見るようにはしています。いちばん大事なのは選手の気持ちのところだと思うので。

 みんながみんな気持ちよくプレーするというのは難しいことだとは思うんですれども、やっぱりウチのチームに所属している以上成長してもらいたいという想いがあるので、例えば期限付き移籍で外に修行に出すタイミングとか、完全移籍で選手を放出しなければいけないタイミングとか、ステップアップのタイミングなども選手の気持ちに寄り添いながらやってあげられるように。そういうケアがしっかりできるのもいいクラブの1つの条件かなと思っているので。

 次回#2では坂本氏がユース年代に意識して取り組んでいたことや、チームの特徴をどう出していくかなどについての話を紹介する。