ーーガンバ大阪ユースを指導されていた時、「ファーストタッチ」が突出した選手は誰になりますか?
家長昭博(現:J1川崎フロンターレ)や二川孝広(現:関西1部FCティアモ枚方)とかは抜群にうまかったですが、トップチームに昇格した選手もほとんどがそう。当時から私も「ファーストタッチで決まるぞ」ということは厳しくずっと言い続けています。 では私から皆さんに「ファーストタッチ」についてのクイズを1つしてみましょう。ゲームで「パスをするにも自分の前に全くスペースがない」という場面がありますよね?でもスペースは絶対にあるんです。
ーーひょっとして……上にですか?
そうです。180㎝の選手があっても、その上には無限のスペースがあるんです。そこで意図を持って頭上を越すパスを出す。そこに意図があれば何でもOKなんですよ。 その応用がFKであり、シュート。相手のいないスペースに蹴ればいい。シュートであれば相手の位置を見て30mを超える距離では「撃ち込む」。PA内であればインサイドで「流し込む」。シュートでも状況によりいろいろな蹴り方があることを理解してほしいですね。 となると大事なのは、いかに「サッカー言語」が選手たちの中にたくさんあるかだと僕は思います。日本のサッカーでは「がんばろう」とか「もっと走ろう」といった抽象的な言葉を使うことがよくありますけど、考えている(賢い)選手は「ゴールするためにここに走って相手を交わしてポジションを取る」といったことが無意識にできる。 そういったサッカー言語を持って具体的な選択肢を持ったプレーを90分間続ける。それがサッカー選手に必要な要素だと思います。 ガンバ大阪の選手で言えば遠藤(保仁・元日本代表MF)くんはそう言った判断が全部できるし、早いんです。しかもそれが考えられたものではなく「無意識」なんですよね。他の選手が意識する前にパッとできる。状況が見えているから40歳になっても一戦でプレーできるんです。 大黒(将志・元日本代表FW)もそう。点を取るイメージをいろんな形で持ち、常に点を取ることを考えていて、パスを受ける瞬間にどうやってシュートを撃つかを考えてながら、相手との駆け引きをしていますからね。
前編はここまで。後編では上野山メソッドの概論などがいよいよ明かされます。お楽しみに!
(取材=寺下友徳 写真=カマタマーレ讃岐提供 )