――アカデミーダイレクターとして今はどんな仕事をしていますか?
ひとつはコーチ陣の指導とマインドセットを変えることですね。コーチのレベルが上がらないと選手のレベルは上がりません。まず大枠のゲームモデルを打ち出して、それに対してどう練習メニューを作るかを各自に考えさせています。私のメニューを与えることはしません。おそらく私のメニューをそのまま真似れば、練習自体は上手くいくでしょう。しかし、それはコーチ陣のためにはならないし、ひいては選手たちのためにならない。「ボールを大事にする」「奪われたら切り替えを早くする」、そういう明確な方向性を徹底させる方法を自分で見つけてもらっています。
――コーチそれぞれが自分の考えで行動することが大事だと。
ええ。受け持つ年代によってレベルも違うし、選手の個性も様々。ですから南葛SC U-15は各年代によってすべてシステムも違います。就任当初は「レイソルみたいにやらないんですか」と言われることもありました。でもレベルと環境が違いますからね。南葛SCには南葛SCに合うやり方を取るべきだと思うんです。
ただしレイソル時代から踏襲していることもあります。そのひとつが、スタッフ間の密なコミュニケーションです。私も毎日練習に足を運んで、コーチに「なんで今日はこの練習をやったの」と聞くようにしていますし、コーチ同士でも「もっとこうしたほうが良いよね」と話し合ってもらうようにしています。レイソルはコーチ陣のフィードバックがすごくスムーズで、そこがまだ南葛には足りない。他の人の練習を見て、互いに意見を出し合うことが、アカデミー全体のレベルアップにつながると考えています。
――それによりアカデミー全体での共通の課題も見えますね。
そのとおりです。あとは私自身、選手とのコミュニケーションも積極的に取っています。U-18チームに何人昇格させるかも私の仕事ですしね。選手の可能性を広げるためにも、情報を集めて「この子に違うポジションをやらせてみたらどうだろう」とコーチにリクエストをしたりもしています。
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