ーー結果的にベスト16の壁を越えることはできませんでしたが、チームからは不満などは出てきませんでしたよね?

 そうですね。ぼくは「負けた時が本当の姿」って言っています。負けた時に、不満、愚痴、黙り込み、犯人探し、感情の吐き捨てなどが出てくるチームは、チーム作りの過程の中で納得いっていない部分があった証拠なんです。納得度が低いと言うか、負けた時に「やっぱり。こんなやり方ではうまくいかないと思ったんだ」という感情が湧き出てくる。勝っている時には何を言っても正当性がないし、いい雰囲気に水を差したくないからみんな黙っているんですけど、負けたあとに不満が出てくるんです。

 本当にいいチームなら「結果は負けてしまったけど、本当によくやったよな」とか「悔しくてしょうがないけど、やれることはやったよな。お前は本当にいいプレーしていたよ」と言った具合に、お互いに労い、称賛し合える。勝敗だけは誰にもコントロールできないものとして受け止めつつ、自分たちのやってきた取り組みには胸を張るんです。

 森保ジャパンでいうと、ベスト8に入れなくて、負けたことに関しては凄く悔しかったと思うんです。そこは間違いなく。でも負けた後の姿は不満、愚痴、黙り込み、犯人探し、感情の吐き捨てなどは見られなかったんじゃないかなと。そう意味で、選手たちは現実的な納得解に辿り着いて、その戦術を受け入れて戦ったのかなと思うんですよね。理想のサッカーではなかったかもしれませんが。

 そんな森保ジャパンと対照的だったのはドイツで、負けた後にいろいろと不協和音が出てきた。開催地カタールの人権問題への抗議を込めた「ONE LOVE腕章」や「口を塞ぐポーズ」に始まり、大会期間中もチームメイトを批判する選手が出てきたり。おまけに、大会後の休暇にノイアーがスキーでケガをして叩かれていましたね。チーム内外からネガティブな情報が出てきたのは、チーム作りがうまくでできていなかったのかなと感じさせられますよね。

 そう言う意味では、ドイツはいい選手が揃っていても1つにまとまりきれなかったという印象がぬぐえません。改めて、サッカーは個人の力量だけではなく、チームワークのスポーツだなと思います。そう考えると、森保ジャパンは監督のイニシアチブのもとでチームの「在り方」を構築し、選手の意見にも耳を傾けつつ、納得度の高い戦術を作り上げたのでしょう。ただあくまでも個人の推測なので、森保監督と答え合わせしたいですね。

 次の課題としては、多くの方が懸念しているであろう「やり方」の部分だと思います。選手の提案を上手に採用しながら納得度の高い戦術を作り上げた今回の手法は、予定調和では進まない非常に高度なチーム作りです。しかし一方で、ある意味で偶然に支配されている部分があります。もしも、選手から良い提案が出てこなかった場合、やはり監督やコーチングスタッフが「最適解」を提示しなければならないからです。選手から提案が出てこなかったら深刻な状況に陥ってしまう可能性がありますから、やはりスタッフ側の戦術的な引き出しが問われてくるでしょう。

 とはいえ、日本が初めてワールドカップベスト16進出を成し遂げた2002年以降、6大会で4回ベスト16に進出しました。直近6大会で4回以上ベスト16に進出した国を調べてみたら、日本、イングランド、スペイン、メキシコ、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、スイス、ポルトガル、オランダ、フランス、アメリカの12か国でした。世界のそうそうたる国ばかり。イタリアやウルグアイといった過去の優勝国も、ベルギー、クロアチアなども入っていませんでした。やはり、日本は一定のレベルに達したように感じますね。

協力=BRIGHTON CAFE

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