――「答え」とは、指導者が教えるか、自分で考えさせるかのラインみたいなものですか?
はい、そしてそれをどう落とし込むかが、私なりの「答え」ですね。「主体性」をどう育むかの答えというのは、価値観によるところが大きいですから、人によって違うと思います。ですから自分で最適なバランスを見つけ出すしかない。
レイソルでは2016年にスペインのアスレチック・ビルバオからコーチを招いた時に「伝えすぎだ」と指摘されました。でもビルバオのコーチは私たちに「こうしろ」と答えを示してくれるわけではありません。それは指導者自らが考えを見つけなければいけない。指導者にもそれこそ主体性が求められているわけです。それをきっかけに、レイソルのスタッフはコーチングや練習メニューを工夫するなど試行錯誤を重ねながら、より大きくなってきた。私自身もオランダやベルギーに遠征に行った時などは現地のコーチと交流したり、伊東純也(現スタッド・ランス)や中山雄太(現ハダースフィールド・タウンFC)と会って話をしたりして学びを得てきました。そういう経験を通して私の中で主体性について考えていたことが今、より明確に見えるようになってきたということなんです。
――本質と向き合ったからこそ、鮮明になったと。
本質を考えるのは本当に大事ですよ。それは選手にしても同じです。「こうしなさい」と動き方を教えるのは簡単です。そのほうが即効性があるし、指導者としてなんとなく“やった感”がある。でも数か月経てば、選手は忘れてしまう。だから本質を伝えて分かってもらわないと崩れてしまう。それには時間がかかるけど、そういうものだと理解して余裕を持ってやればいいんです。根気よく待って環境を与え続ける、それでいい。ポルト大学で勉強してきた方と4、5時間意見をかわしたり、講義を受けたりして、そのバランスが見えてきました。それを今は南葛SCアカデミーのコーチに還元している最中。インプットしてそれを選手とコーチ陣に落とし込む、結局はそれの繰り返しですよね。
第3回へ続く。第3回では指導のなかで最も重視していること、そして大成する選手の資質について語ってもらっている。
(文=多田哲平)
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