審判を務める山下奏大氏(写真=多田哲平)

――そこからこの3年間。審判として磨いた部分はどこですか?

嶋本 経験を重ねてゲームコントロールは上達したと思います。審判をやるようになってからJリーグやプレミアリーグの試合を見る時に、見始めた時はシンプルにサッカーを見たかったはずなのに、だんだん主審の動きを目で追ってしまうんですよ(笑)。「あ、この場面でこうやってジャッジするんだ」とか。「初めの15分は厳しめに取って、試合が荒れないようにしているんだな」とか。そういう気づきは増えましたね。

山下 僕の場合、審判について真剣に考えるきっかけが、和倉ユースを担当した時なんです。4泊か5泊、石川県に泊まり込みで毎日審判をやって。その大会で高校生に結構ジャッジについて言われたんですよね。高校生も本気なので、このままでは言われ続けるだけだなと思って、そこで立ち振る舞いはすごく意識するようになりました。

――審判にとって選手とのコミュニケーションはすごく奥が深いテーマだと思います。何を意識していますか?

嶋本 100パーセント合っているということはないんですけど、ジャッジを迷わないことですね。判定に不服を言われた時には、「押したからだよ」「引っ張ったからだよ」と説明するようにしています。僕は結構コミュニケーションは多いほうだと思いますね。

山下 とはいえ過度に選手と喋りすぎると「この審判なら文句を言っても大丈夫」だと思われる危険性がある。なので、ある程度の距離を保ちつつ、判定に納得させるだけの材料を用意して、ちゃんと言葉で説明できるように考えていますね。優しいところと厳しいところのメリハリはしっかり持つことを意識しています。

――審判から見て、良い選手は?

嶋本 「今のはボールにいっているでしょ」と初めは熱い気持ちで判定に疑問を持っていても、冷静さは忘れず、次のプレーの時には「今のプレーはどう見えていましたか」と聞いてくる選手はすごく好印象ですね。こちらもそれを説明する時に新しい気づきがあったりします。

山下 レベルが上がると、ルールをしっかり理解したうえで抗議してくる選手がいて、その時に「分かっているな、上手いな」と思いますね。

――最近はVARなどテクノロジーも発達してきて、より難解になってきていますよね。

山下 そうですね。でもVARが入ると笛を吹くタイミングが遅くなる部分はある一方で正確性は間違いなく上がりますよね。

嶋本 確かに流れが止まってしまうデメリットはある。でも昔の映像を見ると、オフサイドの判定を見逃していたりするけど、VARが入ることでそういう誤審がなくなるので、正確性を取るほうが大事なのかなと。

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