審判を務める嶋本嵐氏(写真=多田哲平)

――Jリーグの審判はやはりおふたりの目から見て凄いですか。

山下 Jリーグの審判はめちゃくちゃ上手いです。吹くところは逃さずに吹いているし、選手との距離感もしっかりしている。すごく参考になります。

嶋本 プレミアリーグの審判と比べてもレベルは高いと思います。運動量が全然違うんです。しっかり走り寄って近くで見えているんです。体型を見ても海外の審判よりシュッとした人が多いですよね。

――おふたりの理想の審判像は?

嶋本 極力目立たないこと。「きょう審判おった?」と言われるくらい影の薄い審判を目指していますね。

――目立たないことが良い審判の条件だと?

嶋本 はい。人によって捉え方は違うはずですが、僕はそう考えています。

山下 審判が目立つ試合って大体が荒れた内容だと思います。昨年のワールドカップでのオランダ対アルゼンチン戦(計18枚のイエローカードが提示された)みたいに審判が目立ってしまうと、選手のプレーでなく審判に観客のベクトルが向いてしまう。それだとレフェリングとしては失敗なのかなと。まずは円滑に試合を進められることが優れた審判だと思うし、僕の理想でもありますね。

――円滑に進めるためには、先ほど言っていた選手との距離感以外に、何が大事になってきますか?

山下 笛のメリハリですね。流すところとそうでないところ。アフターの場面ではすぐにファウルを取ったりとか、そういうメリハリは自分でも重要だと感じるし、いろんな人に言われます。

――会場で教えてもらうことも多いんですね。

山下 そうですね。

嶋本 ただ学生主体でやっているので、フィードバックや指導も全部学生でやるんです。アマチュアだとどうしても限界があって、フィードバックや指導についてはまだ足りていないのが現状ですね。

――外部講師を呼んだりはしますか?

山下 Jリーグで何試合も担当している大塚晴弘さんと僕が個人的にご縁があって、一度講義をしてもらったことがあります。そこで審判の考え方やどう技術を磨いてきたのかを話していただきました。それを聞いて、僕自身の考え方も大きく変わりましたし、他の部員もすごく感銘を受けていました。

――どういったところが変わりましたか?

嶋本 まずルールブックにおいて、自分たちの知識不足を痛感させられました。大塚さんが2時間近く講義をしてくれて、そのなかで『こういう場面ではどうジャッジする?』と質問された時に、それまでルールブックをちゃんと細かく読んだことはなかったので、なかなか上手く答えられなかったんです。でも『これはルールブックの何ページに書かれているよ』と教えてくれて。それまでは、ルールブックを基準にしていなくて、一般的な知識だけでやっていた部分がいかに大きかったかを感じました。専門的な知識の大切さを大塚さんの話を聞いて気づくことができました。

――では最後におふたりの今後のビジョンを教えてください。審判部の活動を通してこれからどうしていきたいですか?

嶋本 まず将来の目標は教員になるというのは、先ほども言った通りなんですけど、今年は最後の1年と考えた時に、やっぱり後輩に何をつなげられるかだと思っています。新しい取り組みとして大塚さんに講義をしてもらったのも、後輩に何かを残したいとふたりで話し合った結果なんです。これからも先輩に教えてもらったことをさらにパワーアップして後半に受け継いでいってもらえるようにしていきたいですね。

山下 まず選手として試合で活躍することがサッカー部での目標です。そして次は4回生なので、サッカーだけじゃなくて将来の進路も考えなければいけない。僕も教員になることが目標なので、まずはそのための勉強をして準備をしっかりしていきます。そしてプラスでサッカー部で後輩に残していき、「日本一のチーム作り」というキーワードに向かって頑張っていきたいです。

(文・写真=多田哲平)