私たちの頃は「高校サッカーのストーリーを語れ」と言われました。「スポーツであってスポーツじゃない。人間ドキュメントだ」と。それが良しとされていたんですが、Jリーグが出来て新しいサッカー中継が始まったことでサッカーを観る人が右肩上がりに増えた。今はさらに配信もあります。それによって、サッカーを観る方々のサッカー観が明らかに変わってきていると思います。

 私が自分自身のスポーツ実況で一番大事にしていることは”競技性を崩しちゃダメだ”ということで、まずは競技ありき、選手ありき。昔の人間ドキュメントだけというものにはどちらかというと抵抗がありました。やはりスポーツなので、このゲームがどういうゲームなのかということを追いかけていった上で高校サッカーのストーリーの肉付けしていかないといけない。

 両チームの状況はどうなのか、選手権を迎えるにあたり選手はどういう状況になっているのか。そういうことを何も知らない視聴者の方にもわかるように、事実を伝える必要がある。そしてゲームが始まったらボールをリアルタイムで追いかける。これは後輩たちにも口酸っぱく言っていることなんですが「ボールをタッチした瞬間に選手の名前を言う」ということです。ボールをタッチして捌いて次の選手にボールが行っているのに、その一個手前の選手の名前を言ってしまうと、視聴者の方に誤った情報を伝えてしまうことになる。

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