宮澤ミシェル氏(写真=佐藤亮太)
―――すごい縁というか、巡り合わせ、タイミングですね。
あともうひとつ。現場感が欲しかったことがあります。この1年、選択理論心理学を勉強しています。これは大企業の研修で使われているものです。たとえば「成功は技術である」という言葉があります。やり始めれば、誰もがある程度のところまではできる。なぜなら成功は技術であるから。限られた人だけが成功するわけじゃないという考えです。以前から、サッカーのグループ作りと企業作りは一緒だと考えていました。学ぶなかで、ある人から「ミシェルさん、話し手になってくれ」と頼まれました。ただその前に、現場の温度感がどうしても欲しかったんです。学びたいトレーニング理論を実践できる。そして選択理論心理学も学べる。その両方ができると考えました。これまで落とし込んできたものがあったので、ここで子どもたちがどのような反応を示すか、飯田先生とやってみたかったです。そして、ことしの3月に試合を見せてもらってから、手続きを踏んで4月にテクニカルコーチになりました。
―――改めて高校サッカーの指導はどうですか。
僕が高校生のとき、厳しさの名を借りたパワハラは当たり前でした。フランス人の父は「どうなっているんだ」「なぜこんなに長く練習をするんだ」と驚いていました。当時の僕もおかしいなと思っていましたが、父は「君たちのやっていることは軍隊のようだ」と言われたりもしました。実は選択理論心理学には、人の話しを聞く傾聴、励まし、そして信頼、尊敬などがあります。外的コントロールから内的な動機付けがいまの主流です。たとえば、WBCを戦った野球日本代表=侍ジャパンもそうですし、サッカー日本代表を率いる、森保一監督もそうです。厳しさはあっても、決して外的なものでなく、信頼・尊敬があり、意見の違いは話し合いながら、チームを作り、まとめていく、そうした考えがあります。