―――進学校ゆえの悩みですね。帝京高校でコーチを務めた1997年ころ、おそらくJリーガーになりたいと思う選手ばかりだったかもしれませんね。

 大学に行ってもチャンスがあればやりたいという選手もいれば、「サッカーをやっても」という意見があります。将来、社会でどう生きればいいのか。いまの親御さんは「勝手にやりなさい」とは言わないですよね。日本人は社会というものを大事にして生きていきますね。逆に外国人は自分の人生を生きていくんです。これは亡くなった父親を見て、思います。いまの日本は受験が大事。勉強して幸せになるという考えが大きいですね。少し前、進学のために高3の早い時期にサッカー部を引退した人が、最後の選手権までやっておけばと後悔している、そんな話しをしていました。

―――いまの生徒たちをみてどう感じますか。

 選手たちには、いまいる環境は普通じゃないんだよと伝えてはいます。何のために大学にいくのかがわからない。「とりあえず大学にいく」。これが目標になっていると感じます。当然、サッカーをやっていますから常に勝ちたいと思っているでしょうが、いわゆる良い大学入って、そこからだよと。サッカーはもういいですという感じにはちょっと驚きますね。

 僕が高校のときは赤点さえ取らなきゃいいと思っていました。しかし、大学に入って、勉強の面白さに気付きました。関係ないの授業をよく受けに行きました。生理学、解剖学…なんて面白いんだなと。これが何の意味があるのかがわかると面白くなりました。そういった面白みをサッカーで発見してくれれば、より楽しくなります。

 当時の僕には体育の先生になりたい、サッカーの選手になりたいと目標がありました。そのなか、この学校には勉強ができて、スポーツができてバランスよい生徒が集まってきます。その彼らが大学にいってなにをするのか。彼らにとって大学って何か。良い会社に就職するとはいえ、どういった分野に就職するのか、現時点では見つかっていないと思います。自分というものをいつ出すのか。本当の希望がその先にあってくれることに期待したいです。

(文・写真=佐藤亮太)